それは、白い白い

  真っ白な花が咲いているようでした。



キミがために花は咲く......ALL 01



「千艸。フォークはこう持つ。」
「こう?」
「そうそう。」

 彼等と出会って、俺は毎日隣に誰かがいる心地よさを再認識して。



「成重さんもうこっちの料理完璧なんじゃない?この肉じゃがとか最高。」
「羅貫くんに借りた本に書いてあったんですよ。」
「初めて作ったとは思えないもん。」

   絶対に失いたくないと思いました。




 千艸も成重さんも灯二も。
ちょっと前までは自分も一人だったと言いました。

「寂しくなかったの?」

 フト俺はそう尋ねた。
宿題を終え皆と座敷に布団を敷きながら向こうの世界を色々と教えてもらっていた。
そんなときに、三人がそんなことを言うもんだから。


「私は・・・一人でも結構楽しくはやれてたような。」
「そんな・・・。」

 ハズはないだろう。
人間一人じゃ生きてけないと、学校の先生も言っていた。


 ・・・・俺は?
   じいちゃんは・・・・?


 俺や母さんが来るまで、じいちゃんは一人で。
俺や母さんを躊躇無く受け入れ、家族にしてくれたのは。

  寂しかったから嬉しかったんだ。


   そう、言ってくれた。



 俺は、どうしてこの三人と暮らしているんだろう。
どうしてこんな、受け入れがたい事実を受け入れることが出来たんだろう。



 頬になにかが伝うと、成重さんと灯二がとても慌てていた。
俺は一瞬自分でも目を丸くしてしまい、その後苦笑するしかなかった。


「羅貫。」

 赤い包帯の巻かれた指で、千艸が俺のソレを拭ってくれる。
ポンポンと頭を優しく叩かれると、じいちゃんを思い出し、また涙が出た。


「俺、結構いまの暮らし気に入ってんだよね。」
「羅貫くん・・・。」

 成重さんが、千艸がしてくれたのとはまた違う感じで俺の頭に触れた。
少し俯いて、にっと笑うと成重さんも灯二も笑ってくれた。



  一人は寂しくないと、言い聞かせていました。



 一日を自分の好きなように計画をたてて、その通りに実行して。
一日を楽しく過ごせている気でいた。

 だけれど。

 千艸が庭にいた時からどこか歯車が狂って。
だけれど、それが居心地が良いと心の奥で思いつつ。


 彼等には彼等の世界があって。


 いずれ俺を置いて帰ってしまうのだと思うと。
  これ以上、踏み込んではいけないと。 心の奥で言う俺もいて。



「正直。どうしたらいいのか。自分がどうしたいのか。わかんなくなってた。」


 一通り布団を敷き終えると、俺は布団にもぐりこんだ。
恥ずかしくて、なんか皆の顔を見れなくて。


「羅貫くん。」

 成重さんの手が布団の上から俺をポンポンとなだめる様に触れる。
なんだかソレが心地よくて、そっと隙間から成重さんを覗き見る。

「私も、たぶん心の奥底では。そう言い聞かせていたかもしれない。」
「成重さん・・。」
「灯野も千狼も。きっと同じだと思うんですけどね。」

 にっこりと笑うと成重さんは目だけで千艸と灯二を見た。
一瞬目を丸くした灯二も、苦笑したように笑う。




 一人じゃないことがこんなに嬉しいなんて。
  思ってもいなかった。


「羅貫くんの咲かせる花は、きっと私達の世界に太陽を出してくれる気がします。」



 この広い家にたった一人だった俺を、もう一度暖かく包んでくれたこの人達のために。



  花を咲かせたいと、  思いました。
 





初。杉浦先生二次創作。むずかすぃ。
なんか中途半端で大変申し訳ない。



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